2026年3月12日
中東アジア情報戦略研究所
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エグゼクティブサマリー
本稿は、現地からの最新レポートに基づき、「イラク経済がホルムズ海峡にどの程度依存しているのか?」を整理・分析したものである。
イラクの石油輸出の約94%は南部バスラ地域の湾岸ターミナルから出荷されており、これらの原油タンカーは世界市場へ向かうためにホルムズ海峡を通過する必要がある。その結果、イラクの石油輸出の約90~95%がホルムズ海峡に依存している。
一方、イラクはガソリンやディーゼルなどの精製燃料を海外から輸入しており、その輸送の大部分も湾岸の港湾からホルムズ海峡を経由する海上ルートに依存している。アナリストの推定では、海路で到着する燃料やLPGの70~80%以上がホルムズ海峡ルートで輸送されているとされる。
このようにイラクは
- 輸出(原油)
- 輸入(燃料)
の双方がホルムズ海峡に依存する構造を持つ。
ホルムズ海峡は世界のエネルギー輸送における最重要チョークポイントの一つであり、その安全保障環境はイラク経済のみならず、日本・中国・韓国・インドなどアジア主要経済にも大きな影響を与える可能性がある。
はじめに
本稿は、最新の現地レポートおよびエネルギー市場関係者の分析情報を基に、イラクの石油輸送と燃料供給の構造を整理し、同国経済がホルムズ海峡にどの程度依存しているのかを検討するものである。
ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ狭い海峡であり、世界の石油輸送の大きな割合が通過する海上交通の要衝として知られている。湾岸産油国の原油輸送の多くがこの海峡を通過しており、世界のエネルギー供給において極めて重要な役割を担っている。
イラクの場合、その経済構造上、この海峡への依存度は特に高い。
同国の石油輸出の大部分は南部バスラ地域の港湾施設から出荷されており、世界市場へ向かうためにはホルムズ海峡を通過する必要がある。また国内精製能力の不足により、ガソリンやディーゼルなどの燃料を海外から輸入しており、その輸送ルートの多くも同海峡に集中している。
このような構造は、ホルムズ海峡の安全保障環境がイラク経済に直接的な影響を及ぼす可能性を意味している。本稿では、石油輸出ルート、燃料輸入構造、そして海峡封鎖がもたらす潜在的影響について整理する。
1. イラク石油輸出とホルムズ海峡依存
イラクの石油産業は同国経済の中核であり、国家財政の大部分を石油収入が占めている。
現在、イラクの石油輸出の約94%は南部のバスラ地域の湾岸ターミナルから出荷されている。これらの原油タンカーはペルシャ湾を通過し、世界市場へ向かうためにホルムズ海峡を通過する必要がある。
一方、トルコを経由する北部輸出ルート(キルクーク‐ジェイハン・パイプラインなど)は輸送量が限定的であり、政治的要因などによって停止することも多い。
その結果、イラクの石油輸出の約90~95%が湾岸ルート、すなわちホルムズ海峡に依存する構造となっている。
2. 燃料輸入と海峡依存構造
イラクは原油輸出国である一方、国内精製能力の不足からガソリンやディーゼルなどの精製燃料を海外から輸入している。
主な供給国には次の国が挙げられる。
・アラブ首長国連邦(UAE)
・インド
・その他の湾岸諸国
これらの燃料は海上輸送によって湾岸地域の港湾から出荷され、ホルムズ海峡を経由してバスラ港やコール・アル・ズバイル港などの南部港湾へ到着する。
市場アナリストの推定では、イラクに海路で到着する燃料やLPGの70~80%以上がホルムズ海峡ルートに依存しているとされる。
3. ホルムズ海峡封鎖の影響
現地の政府関係者や政策顧問は、ホルムズ海峡が封鎖された場合、イラク経済に深刻な影響が生じる可能性を指摘している。
想定される影響としては次の点が挙げられる。
・原油輸出の大幅な停滞
・南部港を通じた燃料・物資輸入の停滞
・国内エネルギー供給の混乱
つまりイラクは
輸出(石油)と輸入(燃料)の双方が同一の海峡に依存する構造的脆弱性
を抱えていることになる。
4. 世界エネルギー安全保障との関係
ホルムズ海峡の重要性はイラクに限ったものではない。
同海峡は世界エネルギー輸送の主要ルートであり、多くの国のエネルギー安全保障と密接に関係している。
特に影響が大きいとされる国には次の国々がある。
・日本
・中国
・韓国
・インド
・イラク
これらの国々は中東原油への依存度が高く、その輸送の多くがホルムズ海峡を通過するためである。
結論
本稿の整理から、イラク経済はホルムズ海峡への依存度が極めて高い構造にあることが明らかとなる。
輸出原油の約90~95%、燃料輸入の70~80%以上が同海峡を通過しており、海峡の安全保障環境はイラク経済の安定に直接的な影響を及ぼす。
このような構造は、ホルムズ海峡が単なる地域海峡ではなく、世界エネルギー市場にとって極めて重要な戦略的チョークポイントであることを示している。
・舩山 美保(Miho Funayama)
上智大学・青山学院大学大学院にて国際政治経済学を修了。 地政学・PSYOP(心理作戦)・情報戦の視点から中東情勢を分析。 一般財団法人 日本危機管理研究所 理事・主任研究員。
Graduated from Sophia University and completed her master’s degree at Aoyama Gakuin University Graduate School, specializing in international political economy.
Analyzes Middle East affairs from the perspectives of geopolitics, PSYOP (psychological operations), and information warfare.
Director and Senior Research Fellow, Japan Institute of Crisis Management.
