米軍、カーグ島を爆撃
―イラン原油輸出の心臓部に迫る最大規模の空爆
2026年3月14日
発行元 中東アジア情報戦略研究所
*This article is available in English via Google Translate.
エグゼクティブサマリー *(Kharg Island、カーグ島、ホルグ島、ハーグ島)
- 2026年3月13日、米国はイランの原油輸出の約90%を担う戦略拠点 カーグ島の軍事目標をすべて爆撃。
- トランプ大統領はこれを「中東史上最大規模の爆撃」と表現。
- ただし、石油インフラは意図的に攻撃対象から外したと説明。
- 一方で、イランがホルムズ海峡で船舶通行妨害を続ける場合、石油施設への攻撃を即座に再検討すると警告。
- 戦争開始以降、ブレント原油価格は40%以上上昇し100ドルを突破。
- 石油インフラ攻撃が現実化した場合、世界のエネルギー市場に過去最大級の影響を及ぼす可能性。
- 背景では、イランが中国向け原油輸出を人民元建てで継続している状況が存在。→脱ドル化への伏線
- その結果、ペトロダラー体制に亀裂が生じる可能性という構造的問題も浮上している。
- ■ キーワード/Key Words
- カーグ島空爆 / Kharg Island Airstrikes
- ホルムズ海峡リスク / Strait of Hormuz Risk
- 中東エネルギー安全保障 / Middle East Energy Security
- 原油価格高騰 / Oil Price Surge
- ペトロダラー体制の揺らぎ / Petrodollar System Shift
- 人民元建て石油取引 / Yuan-Denominated Oil Trade
- 米国・イラン軍事エスカレーション / U.S.–Iran Military Escalation
1. 事実関係
2026年2月28日に米国・イスラエルがイランへの大規模軍事作戦「Operation Epic Fury」を開始してから約2週間、米中央軍(CENTCOM)は3月13日夜、カーグ島の全軍事目標を爆撃した。トランプ大統領は彼のSNSTruth Socialで「石油インフラは品位のため今回は攻撃しない」と投稿。
しかし、ホルムズ海峡での妨害行為が継続すれば「即座に判断を再考する」と強く警告した。
米国防長官ヘグセス氏によれば、開戦以来、米・イスラエルは合計約15,000か所の目標を攻撃した。
2. なぜカーグ島が重要なのか
- イランの原油輸出の約90%が集中する唯一の積み出し拠点(年間約9億5,000万バレル)
- ペルシャ湾岸の国際エネルギー供給の「咽喉部」に位置し、アジア向け輸出の大半を占める
- 石油インフラが破壊された場合、イランの経済は数か月から数年にわたって甚大な打撃を受けるとアナリストは予測
- 一方でJPモルガンは、カーグ島が停止した場合、国内生産量の最大50%が失われるリスクがあると試算
3. 市場・地政学リスク
ホルムズ海峡はすでに事実上の閉鎖状態にあり、IEA(国際エネルギー機関)はこの事態を「記録上最大の供給打撃」と表現した。ブレント原油は100ドル超、米国のガソリン平均価格は1ガロン3.63ドルと2024年5月以来の高水準に達している。退役陸軍准将マーク・キミット氏はCNNに対し、「石油インフラへの攻撃は中東全域のインフラへの報復を招き、価格が制御不能になる可能性がある」と警告した。
イランの新最高指導者モジュタバ・ハメネイ師は、ホルムズ海峡を「圧力手段として閉じ続ける」と宣言。一方でイランは人民元建てでの取引を条件に一部タンカーの通過を認める案を検討中ともCNNは伝えている。
4. 中国・人民元という変数 ー脱ドル化への伏線
- 今回の危機の背後で、見過ごせない地政学的構図が浮かび上がっている。
- イランは西側諸国向けの原油輸出を事実上停止する一方、中国向け輸出は継続。
- 衛星データ分析企業 Kpler によれば、3月に入っても1日約150万バレルを積み出し、そのほぼ全量が中国向け。
- 開戦以来、少なくとも1,170万バレルが ホルムズ海峡 を通過して中国に到達。
- 中国はこの危機を”戦略備蓄拡充の機会”と捉えている。
- 2026年1〜2月の中国の原油輸入量は前年比15.8%増。
- イランにとって中国は”事実上唯一の「安全な買い手」”となっている。
- 人民元建て決済での原油取引継続が水面下で協議されていると報じられている。
- イランは人民元決済を条件に一部タンカーの通過を認める案を検討していると CNN が報道。
- これが実現すれば、エネルギー取引の基盤である ペトロダラー体制 への直接的な挑戦となる可能性。
- 米国にとって、カーグ島への軍事圧力や海峡封鎖問題は単なるエネルギー問題ではない。
- 中国がこの危機を利用して人民元の国際化を進める場合、今回の紛争は国際通貨秩序の転換点として歴史に刻まれる可能性がある。
5. 今後の焦点
- イランがホルムズ海峡の妨害を継続・強化するか否か
- 米海軍によるタンカー護衛作戦の開始時期と実効性
- 週明け市場でのエネルギー価格の反応(週末明け最初の取引日が最大の注目点)
- カーグ島の石油インフラへの攻撃へのエスカレーションの有無
- 米・イラン間の外交チャンネルを通じた海峡再開交渉の行方
補足
カーグ島(Kharg Island )は、イラン南西部のペルシャ湾にある小さな島。イランの石油輸出の中心拠点。
日本語では主に3種類の表記がある。
ホルク島(メディアによって使用)
カーグ島(最も一般的)
ハーグ島

参考資料
本レポートは公開情報に基づき作成しました。情報は2026年3月14日時点のものです
Axios – U.S. conducts massive bombing of strategic Iran Island, Trump says
Foreign Policy – Kharg Island Bombing: Trump Orders Strikes on Iran’s Vital Oil Hub
CNBC – Trump says U.S. ‘obliterated’ military targets on Iran’s Kharg Island
Fortune – U.S. hits military targets on Iran’s Kharg Island as war escalates
CNN Live – Iran war news; US strikes Kharg Island oil export hub
OilPrice.com – Trump Bombs Iran’s Kharg Island and Threatens to Hit Oil Exports
Bloomberg – Why a Strike on Iran’s Kharg Island Would Shake Oil Markets
Windward AI – March 12, 2026: Iran War Maritime Intelligence Daily
NBC News – Iran’s new supreme leader vows to keep blocking Strait of Hormuz
・舩山 美保(Miho Funayama)
上智大学・青山学院大学大学院にて国際政治経済学を修了。 地政学・PSYOP(心理作戦)・情報戦の視点から中東情勢を分析。 一般財団法人 日本危機管理研究所 理事・主任研究員。
Graduated from Sophia University and completed her master’s degree at Aoyama Gakuin University Graduate School, specializing in international political economy.
Analyzes Middle East affairs from the perspectives of geopolitics, PSYOP (psychological operations), and information warfare.
Director and Senior Research Fellow, Japan Institute of Crisis Management.
